Chap-30. AlmaLinux を試用

 Redhatクローンです。試すのはバージョン 8.3 です。
これまでチェックした他のディストリと同じように、以下の3つの視点で使いやすいかどうか見てみました。
例によって、a. と b. が重点項目です。
 書くことはほとんどCentOSのChap-20と同じですが、CentOSが直になくなるので、以降こっちで更新していくつもりです。あっちのチャプタはこのまま放置、又は近いうちに削除です。

Redhatクローンに対する世間一般の評価は、サーバ専用OSみたいな感じですが、Distrowatch 見てるとカテゴリーとしてはデスクトップもあります。
このため、(c) についても、軽くチェックしてみます。


Sec-1.インストール
Sec-2.日本語入力の設定
Sec-3.インストール後、最初に試すこと
Sec-4.最初に試すこと
Sec-5.Windows 代替としての利用(ATW)
Sec-6.全般としての印象
Sec-7.追加: Xfce の導入
Sec-8.自分でコンパイルした Sylpheed をランチャーに登録



Sec-1.インストール

 使うのは、メモリ8GB、SSD 120GBです。
最近のディストリはどれもグラフィックインストールがあり、やりやすいです。
このインストーラ(Anaconda)はCalamaresと並んで優秀なインストーラです。やりやすいし、ハードウェアへの対応も優れています。Ubuntu のUbiquity やDebianのインストーラではうまくインストール出来ないような、癖のあるノートPCへも、AnacondaやCalamaresだとインストールが成功しやすいです。
インストール作業そのものは簡単なので省略です。


インストール完了したら最初に、selinux の無効化と、リポの追加をしておきます。
私はselinuxの、屋上屋を架す考え方には否定的です。管理しづらい。
selinux の無効化は /etc/selinux/config の中で SELINUX=disabled としてリブートするだけです。
(注:SELINUXTYPE= のところは触らない。ここを間違えて書き込むと OS が立ち上がらなくなるそうです、汗)

 リポについては Fedora を追加しました。

------ (Fedora repo) -------
# dnf install epel-release
# nano /etc/yum.repos.d/epel.repo

「priority=10」を追記。


書き直した後
# dnf update



 修正後のソフトウェア(パッケージインストーラ)を見ると、修正前よりかなりソフトが増えていました。十分とは言えなくても、ありがたいことです。

 また、私の場合は自分で弄り回してセキュリティ対策するので、firewall-cmd の設定を変えておきます。これは、システムに備えられたセキュリティを極力利用する使い方なら、やらない作業だと思います。私オリジナルのやり方(笑)

# firewall-cmd  --set-default-zone=trusted

これでファイアウォールの設定を何もしなくても他のマシンから sshログインできるようになります。LAN内使用なら、このまま。サーバなら自分のスクラッチな記述(かなり癖あり)でフィルタをかけます。





Sec-2.日本語入力の設定

 リポの追加がやってなければ、標準でインストール済みの ibus-kkc を使います。ロケール日本でインストールした場合は最初から入っています。
設定の方法は Chap-27. Sec-1. に書いてあります。

リポが Sec-1. で書いたように修正してあれば ibus-mozc を追加でインストール出来ます。出来れば ibus-mozc のほうが良いと思います。変換効率その他、メリットが多いです。
AlmaLinux の場合は、ibus-mozc を入れたら設定用のツールも自動的に入ります。(Ubuntu でいう mozc-utils-gui に相当するツール)
このため、ibus-mozc を入れたらすぐに設定に取り掛かれます。
設定の方法は Chap-27. Sec-2. に書いてあります。





Sec-3.インストール後、最初に試すこと

 例によって普通のUNIXマシンらしく管理・設定ができるかを試します。
冒頭に書いたことのうち、主に a. b. 利用のためのチェックをやります。
で、試すことは以下のようなことです。

以下、順に書きます。




Sec-4.最初に試すこと 

IPアドレスとリゾルバ
Chap-19. Sec-3. に別途書いたCentOSと同じです。CUIインストールしていても、問題なくエディターで管理できます。オケです。
CUIインストールした場合、nmcli コマンドも問題なく使えます。


/etc/rc.local
Debian と基本的に同じやり方でオケです。Chap-13. Sec-5. 見てください。


パケットフィルタ
パケットフィルタはいささか癖があります。nftables を入れてみましたが、システム固有のもの(チェーン)が入っていて邪魔です。が、なかなかそれを消去できません。
OS が立ち上がった後で nft flush ruleset とするときれいに消えます。でも、立ち上がりで自動で消そうとすると厄介(汗)
最初、rc.local の中で、nft flush ruleset ってやってみたのですが、OSが立ち上がって見てみると、まだ固有のものが残ってる! しつこい!
やむなく、rc.local の中で nft flush ruleset ってやる前に sleep hoge ってスリープを入れました。hogeの秒数は適当ですが・・・
それで、ようやくシステム固有のものを自動消去出来ました。どうやら 8 秒くらい sleep すれば、消えます。
フィルタのことも、CentOSとまったく同じです。


デーモン管理
Debian と基本的に同じです。Chap-13. Sec-7. 見てください。


DAT ドライブ
 この部分のみ、CentOSと違います。テープドライブの電源を入れると一般にどのOSも(CentOSも)/dev/st0 や /dev/nst0 なんてスペシャルファイルができます。が、なぜかAlmaではできません。
想像ですが、ひょっとするとカーネルコンパイル時にUSBのテープドライブが使えるようにやってない可能性があります。
とりあえず、そこに手を出すのはやめておきます。なので現時点では、私んちのAlmaはUSBにつないだDAT72ドライブが使えません。

2021-06 補足
 AlmaLinux 8.4に上げたら /dev/st0 とか /dev/nst0 とか、普通に出来ます。8.4なら問題なく USB-DAT72 ドライブの読み書きが出来ます。


シリアル回線
cu コマンドはありません。このため taylor UUCP 1.07 のソースを持ってきてコンパイル・インストールすることになります。
インストールは簡単です。./configure、make、make install だけです。これで無事に cu コマンドが動きました。


apache、postfix、guile、lua のコンパイル
 リポの中で、CentOSではPowerTools のところがenables=0なのですが、Alma ではenables=1 となっています。なのでPowerToolsオプションをつけなくてもPowerTools関連パッケージがインストール出来ます。
そこが違うだけで、後はCentOSと同じです。
2021-06 追記
 8.4にバージョンが上がったらPowerToolsのところがenables=0になりました。なので、自分で1に書き換えることになります。

全般的に、調子良いです。なお、もともとがサーバ用OSなので、当然にCUIシステムにインストールできます。
2週間くらい、これでサーバ運用してみましたが、当然とても調子良いです。




Sec-5.Windows 代替としての利用(ATW)

 CentOS を始めてさわった時は当初パッケージソフトがあまりに少ないのに、驚きました。今回は、CentOSで慣れているので、もう驚きません。デフォルトのままだとパッケージは最小限ですが、私が使う程度のものはほぼ揃っているのでデスクトップ利用でもそれなりです。
Fedoraのリポを追加すると、まあまあなんとかイケます。
更に、Chap-31.に書いているように Flatpak を使ってパッケージを増やせば、格段にパッケージが増加します。かなり快適になります。

プリンター スキャナ
 プリンタは Chap-32. にまとめました。そちらを見てください。Wifi経由で使えます。
Chp-32.の Sec-3. でも Sec-4. でもドライバ等のインストールができます。Sec-4. でいくときは以下のようにパッケージを追加します。

# dnf install cups-devel

開発ライブラリとヘッダです。
スキャナも Wifi 経由で使えます。Xsaneが相性良さそうです。


ブラウザ
 Firefox がデフォルトで入ってます。それほど新しいのでは無いですが、とりあえず普通に使えます。ただし、音楽番組(例えば accuradio とか)や動画(プライム)などは見られません。聞けません。
そういう時は、Google-Chrome を使います。割合と簡単に入ります。

ここからダウンロードして、同時にインストールします。

https://www.google.com/intl/ja/chrome/

これで、無事に音楽が聞け、プライム等が視聴できるようになります。

2021-06 補足
 AlmaLinuxのFirefoxで動画(プライム等)を見る方法、Chap-31.に書きました。なので Google-chrome 必須というわけではありません。



メーラ
AlmaLinux には Evolution というメーラが入っていますが、私の好みは sylpheed です。パッケージにはありません。
以下のサイト(本家)から sylpheed-3.7.0.tar.gz のソースをダウンロードしてコンパイル・インストールしました。

https://sylpheed.sraoss.jp/ja/

まず、gtk2-devel を以下のとおりインストール。

# dnf install gtk2-devel

またソースを展開した後の configure は

$ ./configure --prefix=/usr2/local/sylpheed-3.7.0

なんて、いつものように適当にやりました。あとは普通に make, make install しただけ。
ただし、アイコンに結びつける登録のやり方を知りません。なのでホームディレクトリにシンボリックリンク貼っておいて、ファイルマネージャで開いてクリックします。
それで無事に動くので、一応オケです。


オフィス
Libre-Office がデフォルトで入っていて、全然問題なしです。


画像ソフト
Gimp がデフォルトで入っていて、問題なく動きます。十分良好です。


パッケージのアップデート
GUI のソフトウェアでも、terminal から # dnf update とやっても、どっちでも大丈夫です。問題は無いです。


VLC の利用、市販DVDの再生
 rpmfusion を使ってVLCをインストールし、市販DVD再生を試みました。一旦うまく行ったのですが、しばらくしたらおかしくなりました。
何故か有料サイトに誘導されるようで、怪しげです。別の方法(有料サイトに誘導されたりしない方法、笑)をChap-31.に書きました。そっちをご覧ください。





以上です

 spectre-meltdown への対応は、ユーザ側が何もしなくても対応できてます。




Sec-6.全般としての印象

 3つの視点で評価します。
   視点a. ・・・十分安定していて優秀です。2週間ほどサーバ運転してみました。全く問題ありません。
   視点b. ・・・こちらも優秀です。Geek 風に使うのも十分対応できそうです。各種コンパイル作業も簡単です。
   視点c. ・・・当初のパッケージソフトはすごく少ないですが、リポの追加等で快適になります。

 Chap-26-2. でいうカテゴリー1です。一番信頼度の高い分類。やや古めのバージョンを使いながら、Redhat社がパッケージの中身まで手をいれて、セキュリティフィックスやバクフィックスをしています。これがうまく機能していて、セキュリティ上も安定性でもとても優れた仕上がり具合・・・というのが世間一般の評価です。実際に使ってみても安定しています。
 また、CentOSと実質的に同じものなので、CentOS に関するネット上の情報が使えます。レベルが高くて十分な情報があります。
セキュアで安定したディストリです。


デスクトップ利用するなら、Chap-31.を見てください。きっと快適になります。








Sec-7.追加: Xfce の導入

 Sec-1.に書いたようにリポが追加してあれば、Xfce が簡単に導入できます。

# dnf groupinstall Xfce

とするだけです。リブートして DE を選択すると、無事に Xfce が立ち上がります。十分に安定して動きます。実用上問題なさそうです。以上です・・・て書いても良いくらいです。
これじゃ素っ気なさすぎなので、もう少し書きます。



IM の設定
 IM、インプットメソッドの設定(指定)です。
GNOME だと、トップダウンから「地域と言語」に入り、IMを追加したりできます。Xfceはそうは行かないので、個別のツールで指定します。

# dnf install im-chooser

とします。im-chooser は Debian系でいう im-config に近いです。im-config はインプットのためのフレームワークを指定するだけだと思いますが、im-chooser はフレームワーク、 IM の指定とか追加及び設定まで出来ます。
使い方は簡単で、ユーザ(自分)で

$ im-chooser

とするだけです。これで GUI の設定ツールが立ち上がります。

im-2

ibus-mozc の場合なので、当然推奨どおりibus を使います。設定をクリックすると IM を追加できる画面になります。もしも、mozc が入ってなければ、追加をクリックして一覧から追加出来ます。mozc を入れたら、これをクリックして設定をクリック。

im-4

例の mozc を設定する画面が現れます。ここで Chap-27. Sec-3. のように設定すれば ATOK 風になります。

im-5

IM を設定し、動作させるのに im-chooser が必要なことが分かっていれば、後は簡単です。



bluetooth のコントロール
 Xfce の導入はネットの記事をみてやりました。記事は CentOS-7 がベースでした。
そこでは GNOME のツールをアイコン化することも書いてありました。が、同様にやろうとしたら CentOS-8.x では、どうもうまくいきません。GNOME のアイコンが隠れちゃって出てきません(汗)。
一番困ったのは、Bluetooth のコントロールです。しばらくあちこち覗いてみても、なんともなりませんでした。なので、やむなく CUI でコントロールします。やってみると簡単です(負け惜しみじゃなくて・・・笑)

bluetoothctl ってコマンドです。ざっと以下のような感じ。bluetooth のスピーカにつなぎます。(ごく簡単な、概要)

$ bluetoothctl(return)


Agent registered
[bluetooth] power on ・・・・・・・・・・・・・・・アダプターのパワーを入れる
[bluetooth] Changing power on succeeded

[bluetooth] scan on ・・・・・・・・・・・・・・・デバイスをサーチする
[bluetooth] Discovery started
[bluetooth] Controller 00:1B:DC:**:**:** Discovering: yes
[bluetooth] device Device F9:31:39:**:**:** RSSI: ***
[bluetooth] device Device F9:31:39:**:**:** ManufacturerData Key: 0x****
[bluetooth] device Device F9:31:39:**:**:** ManufacturerData Value:

[bluetooth] devices ・・・・・・・・・・・・・・・見つかったデバイスを見る
Device F9:31:39:**:**:** SPEAKER5.0 ・・・・・・・目的のものが見つかった

[bluetooth] pair F9:31:39:**:**:** ・・・・・・・pair をはる

[bluetooth] connect F9:31:39:**:**:** ・・・・・・connect する

[SPEAKER5.0] Device F9:31:39:**:**:** Connected: yes
[SPEAKER5.0] Connection successful ・・・・・・・コネクション成功


ここらで、音楽聞いたり、プライム見たりする(笑)



[SPEAKER5.0] disconnet F9:31:39:**:**:** ・・・・・終わったら接続を切る

[SPEAKER5.0] Successful disconnected

[bluetooth] exit ・・・・・・・・・・・・・・・・・コマンド終了する


最初はこれだけコマンド打ちますが、次からは connect と disconnect だけです。うちでやった限り、割合と簡単で確実に繋がります。




******** 補足:2021-10 ********
 あとで気がついたのですが、KDE Plasma をインストールすれば GUI で bluetooth のコントロールができます。
以下の URL にしたがって一式全部入れてみました。著者さん御礼申し上げます。

https://mebee.info/2020/06/10/post-12318/

 念の為ポイントを書いておきます。まず /etc/yum.repos.d/ の中で PowerTools 関係を有効化しておくと便利です。
enabled = 1 としておきます。その後は、以下のとおりにやりました。

# dnf groupinstall "KDE Plasma Workspaces"
# dnf groupinstall kde-desktop
# dnf groupinstall kde-media
# dnf groupinstall kde-apps
# dnf install okular

これで Plasma 環境が一式入ります。「KDE システム設定」ってのをランチャーに登録しておけば、簡単に GUI で bluetooth がコントロールできます。「KDE システム設定」を使うだけなら、上記みたいに一式全部入れる必要はないですが・・・笑





Sec-8.Xfce で、自分でコンパイルした Sylpheed をランチャーに登録

 AlmaLinux や SUSE などでは sylpheed がパッケージに無いので、使いたければ自分でコンパイルすることになります。コンパイル自体は簡単です。ただし、アイコン等に登録するのは DE ごとにやり方がありそうです。
Xfce についてはランチャー登録の仕方を覚えたので、メモに書いておきます。GNOME はまだ分かりませんが・・・(汗)

まず空のランチャーを作っておいて登録開始。

syl-01

下から2つ目の作成をクリック

syl-02

名前とコマンドを入力。コマンドはインストールした所です。

syl-03

次に「アイコンはありません」をクリック。

syl-04

「アプリケーションアイコン」のところを「画像ファイル」に変える。

syl-05

sylpheed をインストールしたところにたどる。うちだと hoge/sylpheed-3.7.0/share/pixmaps/ に画像がある。

syl-06

画像をクリックするとランチャーに sylpheed の画像が入る。

syl-07

「作成」をクリックしてランチャー登録完了。ちょっと見づらいけど真ん中あたりに sylpheed のランチャーがあります。

syl-08

以下、これをクリックすれば sylpheed が起動します。